タックス・ニュース 第238号 2016年10月号

タックス・ニュース 第238号 2016年10月号

トピックス

概念フレームワーク (conceptual framework) について

以前よく使われた「一般に認められた会計原則(GAAP)」という用語は、会計原則が帰納モデル (inductive approach) で作られたものであることを、よくあらわしている。

まず、会計実践を観察し、その中から、一般的な原則を構築する。この帰納法的アプローチにより、当初、国際会計基準も設定されていたが、この方法によると、あまりにも多い会計実践のなかから、複数の会計処理の基準が認められる嫌いがある。例えば、棚卸資産の評価方法の先入先出法、後入先出法、総平均法といった複数の会計処理基準が認められ、結果として、財務諸表間の比較に、もとることとなる。

そのため、国際会計基準は、演繹モデル(deductive approach)による会計基準の設定に、大きく舵を切った。まず、原理原則を設定して、そこから会計実践を演繹的に基準化する。この方法によれば、会計処理の基準は、一つの事象に対して一つの基準が定立するので、比較可能性にもとることがない。

この原理原則こそが、概念フレームワークなのであり、このフレームワークが国際財務報告基準を理解する上で最重要なものと位置づけられる所以である。

なお、IFRS for SMEs(SME基準)には、その中にフレームワークがない。かわりに、「概念及び全般的な原則(Concepts and Pervasive Principles)」をおいて、フレームワークと同じような内容を規定している。しかし、フレームワークという題名は採用していない。

これは、あくまでSME基準はIFRSの一つである、と考えているからであろう。本質的には、両者(完全版IFRSとSME基準)は同じであり、その差異は、「利用者のニーズと費用対効果分析(users’ needs and cost-benefit analysis)(IFRS for SMEs BC46)」から生じるに過ぎない。そこで、検討されるべきは「完全版IFRSに規定される資産、負債、収益および費用の認識と測定に関する多くの原則(principles)について、これをどの程度に簡易化(simplification)するのか(BC16(c))」であった。しかしながら、この、SME基準はIFRSの簡易版である、とする思考に基づくならば、SME基準が、現行のように、完全版IFRSから独立した文書(Stand-alone)であるのは、矛盾である。独立文書としたため、国際的会計基準の単一のセット( a single set of global accounting standards)を作るというIASBの目的と矛盾する嫌いがあることを、IASB自らが認めている(BC47)。

これは、IFRS for SMEs(SME基準)の本質的な弱点である。

一方で、タイの思考は、まず、公開企業用タイ財務報告基準(ほぼ完全版IFRSと同じといってよい)にかかわるものとして、その概念フレームワークが存在する。そして非公開企業に対しては、別の体系、つまり、別のフレームワークを設定し、これに基づいた非公開企業用の会計基準を設定するというものである。

最低賃金の引き上げについて

賃金委員会布告 [主題] 2017年度(仏暦2560年)における最低賃金について

重要事項:

賃金委員会は、タイ国内69県において、労働者の賃金を調整(引上げ)することを決議した。調整(引上げ)については、県のグループを4つのグループに分別して調整(引上げ)される、そのうちのグループ1については賃金の調整(引上げ)を行わない、また、2~4のグループの県については、1日当たりの最低賃金額をそれぞれ305,308,310バーツへと調整(引上げ)する。従って、労働省は、2017年(仏暦2560年)1月1日から以下の通り賃金の調整(引上げ)を開始する以前に、賃金委員会の結論を労働大臣へ提示し、その後、承認を得るために閣議へ提示される。

県のグループ 調整額
(引上げ額)
(バーツ)
県数 県名
グループ1 8 シンブリー、チュムポーン、ナコーンシータマラート、トラン、ラノーン、ナラーティワート、パッタニー、ヤラー
グループ2 5 49 グループ1、3及び4以外の県
グループ3 8 13 コンケーン、ナコーンラーチャシーマー、プラジンブリー、チョンブリ、ラヨーン、スラートターニー、ソンクラー、チェンマイ、サラブリー、チャチュンサオ、クラビー、パンンガー、アユタヤ
グループ4 10 7 バンコク、ナコンパトム、ノンタブリ、パトゥムタニー、サムットプラカーン、サムットサーコーン、プーケット

注記:

最低賃金とは、雇用者が被雇用者に対して支払わなければならない1日あたりの通常勤務時間における賃金の最低金額のことであり、雇用者が被雇用者に通常勤務時間より少ない時間で勤務させていても同様である。また、これ以外に、最低賃金額より低い賃金を支払っている雇用者は、各地域で定められている賃金の引上額に従って被雇用者の性別、年齢、人種、国籍を問わずに引上げなければならない。

尚、外国人が事業の目的で1年の滞在許可を申請する場合は、当該外国人が就業する会社で在職しているタイ人被雇用者の収入額が法令で定める最低賃金額より少なくてはならない。また、個人所得税の申告書(PND.1)にも記載されなくてはならない、そうでない場合、タイ入国管理局は、当該外国人の事業目的における滞在許可期間1年の延長を認可しない。

付加価値税率の据え置きについて

付加価値税率の軽減措置について

経済の減速を理由として、国家平和秩序維持評議会は、国家平和秩序維持評議会議長通達No.65/2559 主題:付加価値税率の軽減(仏暦2559(2016)年11月3日官報掲載)を発行した。仏暦2559(2016) 年10月1日以降仏暦2560 (2017) 年9月30日までの1年間、付加価値税率を7%に据え置くと公表された。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

仏暦2559(2016)年、付加価値税の免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第617号)

ダイアモンド、宝石、ルビー、エメラルド、トパーズ、ガーネット、オパール、サファイア、ジルコン、金緑石、ジェード,真珠その他の類似した性質を持つ宝石で一部未カットのものであり、人工の宝石や自然人である輸出者や販売者のために新規に加工された宝石を除く、の販売目的での輸入または販売時の付加価値税の免税

仏暦2559(2016)年 、所得税の免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第618号)

ダイアモンド、宝石、ルビー、エメラルド、トパーズ、ガーネット、オパール、サファイア、ジルコン、金緑石、 ジェード、真珠その他の類似した性質を持つ宝石で一部未カットのものであり、人工の宝石や新規に加工された宝石を除く、の販売により得た所得で、販売時に法に規定する税率で源泉徴収されている場合の個人所得税の免税

仏暦2559(2016)年 、所得税の免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第619号)

教育省により設立された教育技術開発基金へ金銭や資産を寄付した自然人や法人または組合の所得税の免税

仏暦2559(2016)年、資産の減価償却費の控除に関して規定する歳入法典に基づく勅令 (第620号)

資産の償却費の所得控除に関する改正

産業振興局解説

国家平和秩序維持評議会通達No.74/2557(主題:仏暦2557(2014)年7月27日 電子媒体を介した通信会議) に基づく、法人格を有する組合、株式会社、公開株式会社、同業者組合及び商工会議所における電子媒体を介した会議について

ルーリング第0706 / ポー / 6060

タイで提供されたサービスに係る付加価値税の計算について

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