タックス・ニュース 第248号 2017年8月号

タックス・ニュース 第248号 2017年8月号

主な内容

『法の支配(the rule of law)』
弊事務所が法定代理した案件(No.2567/2560)が最高裁で逆転全面勝訴。
現政権の運営に違和感を持つ外国人は多いかもしれません。
しかし、タイでは、『法の支配』が効いているのです。
本件はVAT還付金にかかる利息計算についての税務当局との争いです。
法定通りの(解釈によりますが)利息はおろか損害賠償金まで相当とされました。
タイの税金還付については、法律通りには進まないといった憶測があるようですが、本件最高裁の判決は、こと多額の還付未請求額を抱える企業にとって大きな道標となりましょう。
詳しくはトピックスで。
『役務提供の使用地の判定問題』
最高裁判例 No.6826/2557では、タイの内国法人が米国法人に行うコンピュータのプログラム開発と引渡し及び関連役務提供業務について、タイ国内使用であると認めて、VAT課税権を相当と認めています。この判例には、VATの使用地判定の問題及び(タイから見て)外国法人との契約が2本ある場合の(実質1本であるかの)事実認定の基準が言及されています。VATの使用地判定はもとより、複数契約の事実認定問題は、恒久的施設の課税管轄権範囲を考量するうえでも外せない論点であり、本件は重要判例といえます。

トピックス

還付加算金請求訴訟で併事務所が最高裁にて全面逆転勝訴しました

  • VAT還付についての税務調査が3年間もかかっていたため、原告(納税者側)は還付金に対して利息(還付加算金)の請求をしていたが、管轄税務署は、税務調査終了後の還付金に対して利息の支払いをしなかったため、中央税務裁判所に還付にかかる利息請求訴訟を提訴していた事案です。
  • 中央税務裁判所にいおいては、原告と被告(タイ歳入局)間に紛争がないという理由で、原告の請求が却下されたため、最高裁に上告中でしたが、去る8月8日に原告側の主張をすべて認める逆転全面勝訴判決が下されました(最高裁判決はNo. 2567/2560)。
  • これは非常に驚いてよいことです。中央税務裁判所で敗訴したのに最高裁でこれが覆るというのは、なかなかないことだからです。こちらの論理構成等が大変良かったものと、推察しております。
  • 昨年、複数のBOI事業から生じた繰越欠損金の計算にかかる税務訴訟について、こちらっは中央税務裁判所で勝訴していたにもかかわず、最高裁で逆転敗訴となった事案がありましたので、タイ税務裁判実務でも(特に、軍事政権下では)、日本のようにお上へ忖度する判決が出される傾向にあるのか、と懸念しておりました。しかし、今回の還付加算金訴訟での最高裁逆転勝訴判決を見ると、必ずしもそうでないことがうかがえます。
  • さて、本裁判では以下の点がとなっていました。
    1. 被告が還付金の還付時(還付金通知)に還付金の利息を支払わない場合、中央税務裁判所での審議の前提となる、紛争があるか、否か
    2. 財務省令第161号第2条に定める還付金に対する利息計算は、還付金利息は書類の提出が完了してから3か月後に計算されるべきである、か否か
    3. 原告は、被告が命令した税務調査のための資料の提出期限内に資料を提出しなかったので、当該提出期限以降、利息を受け取る権利はない、か否か
    4. 被告が還付金支払通知時に還付にかかる利息を支払わない場合、当該利息に対して、遅延損害金(年7.5%)の請求をする権利が原告にあるか、否か
  • これら論点について、本最高裁は、まず中央税務裁判所が却下した理由①について、還付金支払通知時に利息を支払わなかった時点で紛争があると認定したうえで、タイ歳入局側から反論されていた②及び③の主張は、これを明確に否定したうえ、原告がVAT還付請求日の3か月翌日から還付通知書発行日までの間の利息を全額請求する権利を原告に認め、かつ、④についても還付通知日から支払完了まで遅延損害金として年7.5%の損害賠償請求権も認められました。
  • また、②③について、前述の財務省令第161号第4項には、タイ歳入局側からの発行される税務調査の資料の提出命令の提出期限に従わない場合、それ以降利息計算はしない旨、規定されていますが、この意義は利息計算が一時的に停止するに過ぎないこと、資料の提出命令の期限は納税者が当該命令書を受け取ってから15日以上としなければならないこと(ところが本件では資料の提出期限が受け取ってから15日未満となっていましたので、かかる命令書は無効であって、そこに記載されている期限に従っていなくても利息の計算期間に影響しない旨判示しています)、ことが確認されています。
  • 英文のほうに判決の簡易サマリーを掲載しておりますので、そちらも併せてごらんください。いつか翻訳もタックニュースに掲載しようと思っておりますので、そちらのほうもご期待ください。

最新法令一覧表

重要法令・ルーリング全訳・解説

最高裁判所判決要旨 第6826/2557号

役務提供による収入に係る0%付加価値税適用の可否

仏暦2560(2017)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第643号)

仏暦2559(2016)年免税に関して規定する歳入法典に基づく勅令(第604号)の改正

歳入局規則

電子税額票及び電子領収書の作成、引渡し及び保管について

歳入局長通達 (第5号)

勅令第630号に規定される所得税、付加価値税、特定事業税及び印紙税の免税に関する規則、手続及び条件の変更

所得税に関する歳入局長通達 (第298号)

洪水により被害を受けた不動産又は不動産に恒久的に設置された資産の修繕費又は資材又は修繕に使用する道具費用として支払った支出に相当する所得に対する所得税免税のための手続き及び条件について

所得税に関する歳入局長通達 (第299号)

洪水により被害を受けた車両又は車内の設備又は備品の修繕費又は修繕に係る資材又は道具費用として支払った支出に相当する所得に対する所得税の免税のための手続き及び条件について

所得税に関する歳入局長通達 (第302号)

対象産業を運営する会社又は法人格を有する組合に係る所得税の免税に関する基準、手続き及び条件について

所得税に関する歳入局長通達 (第303号)

雇用者が歳入法典第48条(5)及び第50条(1)に従い、退職を理由に1回のみ支払う歳入法典第40条(1)及び(2)に規定する課税所得の基準、手続き及び条件について

歳入局ルーリング第ゴー・コー0702/ポー/1851号 

工場建築による仕入税の場合に係る付加価値税

歳入局ルーリング第ゴー・コー0702/2185号

夫婦の個人所得税(PND.90)申告書提出の場合に係る個人所得税

歳入局ルーリング第ゴー・コー0702/(ゴー・モー11)/2493

輸入者が関税法に基づく法的な疑義又は裁判事件となっている物品の輸入による税還付請求の場合に係る付加価値税

歳入局ルーリング第ゴー・コー0702/ポー/2582

自動車レンタル業においてその支出の税額票に手書きで車両番号を記入するときの仕入税額の取扱い

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