「皆さんが勉強してきた会計は、もうすぐ使い物にならなくなる。勉強しないと、追いつけなくなりますよ。」
今から7年位前のことであろうか。国際会計基準理事会(IASB)の山田辰巳理事(当時)が、はじめて、そのリエゾン国であるタイを訪れたとき、ケッサリー教授の主催するタイの公認会計士協会との会合の後、弊事務所の主なスタッフと昼食を共にしたときの言葉である。
その当時、この言葉がピンときた者は誰もいなかった。何となく分かってはいたが、その意味を、彼の意図するとおり汲み取れたものはいなかったのである。もし、すべてのタイ人会計士と日本人会計士が、その席に同席していたとしても、ことは同じであったろう。山田氏の放った言葉の意義は、事程左様に深い。
「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(企業会計基準委員会 実務対応報告第18号)」「四半期報告制度(金融商品取引法)」」「内部統制報告書の提出義務(「金融商品取引法)」親会社が日本の上場企業である場合、2008年4月から始まる会計期間から、これらの法令が適用されるため、業務の負荷に混乱をきたしている日本人駐在員は多かったと怪しむ。
これらの反射で、タイの子会社では、いまだタイでその適用が開始されない「税効果会計」を計算しなければならない事態となる。さらに、タイでも損益計算書は、限りなく包括主義に近い体裁に改められる予定である。
在外子会社の会計方針統一について、「当面の取扱い」の「当面」とは、日本の会計基準自体が、やがて国際会計基準に収斂していくから、それまでの繋ぎという意味での「当面」である。本来は、連結のため在外子会社の会計方針も、日本基準にあわせなくてはならないが、「当面は」国際会計基準準拠または米国基準準拠で許す、という意味では決してない。こんな揶揄した話しも、日本が国際会計基準の(収斂ではなく)採択に向けて動き出した現在、実感をもって語る事ができるようになった。そして、近々には、損益計算書はなくなる勢いである。
山田氏の予言は、日本でも、タイでも、見事に当たったのである。
2011年 形部記す